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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
送って来たらしい女学生風の少女に一人一人訓戒めいた詞を掛ける。切口状めいた詞が、血の色の極淡い脣から凛として出る。洗錬を極めた文章のような言語に一句の無駄がない。それを語尾一つ曖昧にせずに、はっきり言う。純一は国にいたとき、九州の大演習を見に連れて行かれて、師団長が将校集まれの喇叭を吹かせて、命令を伝えるのを見たことがある。あの時より外には、こんな口吻で物を言う人を見たことがないのである。
純一は心のうちで、この未知の夫人と坂井夫人とを比較することを禁じ得なかった。どちらも目に立つ女であって、どこか技巧を弄しているらしい、しかしそれが殆ど自然に迫っている。外の女は下手が舞台に登ったようである。丁度芸術にも日本には或る manirisme が行われているように、風俗にもそれがある。本で読んだり、画で見たりする、西洋の女のように自然が勝っていない。そしてその技巧のある夫人の中で、坂井の奥さんが女らしく怜悧な方の代表者であるなら、この奥さんは女丈夫とか、賢夫人とか云われる方の代表者であろうと思った。
そこへ、純一はどこへ行ったかと見廻しているような様子で、大村が外から覗いたので、純一はすぐに出て行って、一しょに三等客の待っているベンチの側の石畳みの上を、あちこち歩きながら云った。