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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
大村が突然云った。「まだ何も書いて見ないのですか」
「ええ。蜚ばず鳴かずです」と、純一は鴉を見ながら答えた。
「好く文学者の成功の事を、大いなる coup をしたと云うが、あれは采を擲つので、つまり芸術を賭博に比したのだね。それは流行作者、売れる作者になるにはそういう偶然の結果もあろうが、censure 問題は別として、今のように思想を発表する道の開けている時代では、価値のある作が具眼者に認められずにしまうという虞れは先ず無いね。だから急ぐには及ばないが、遠慮するにも及ばない。起とうと思えば、いつでも起てるのだからね」
「そうでしょうか」
「僕なんぞはそういう問題では、非常に楽天的に考えていますよ。どんなに手広に新聞雑誌を利用している clique でも、有力な分子はいつの間にか自立してしまうから、党派そのものは脱殻になってしまって、自滅せずにはいられないのです。だからそんなものに、縋ったって頼もしくはないし、そんなものに黙殺せられたって、悪く言われたって阻喪するには及ばない。無論そんな仲間に這入るなんという必要はないのです」
「しかし相談相手になって貰われる先輩というようなものは欲しいと思うのですが」