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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
僕は国の中学にいた頃、友達にさそわれて、だいぶ学問のある坊さんの所へちょいちょい行ったことがあります。丁度その坊さんが維摩経の講釈をしていました。みすぼらしい維摩居士の方丈の室が荘厳世界に変る処が、こんな工合ですね。しかし僕はもうずっと先きの方まで読んでいますが、この脚本の全体の帰趣というようなものには、どうも同情が出来ないのです。麺包と水とで生きていて、クリスマスが来ても、子供達に樅の枝に蝋燭を点して遣ることも出来ないような木樵りの棲み家にも、幸福の青い鳥は籠の内にいる。その青い鳥を余所に求めて、Tyltyl, Mytyl のきょうだいの子は記念の国、夜の宮殿、未来の国とさまよい歩くのですね。そしてその未来の国で、これから先きに生れて来る子供が、何をしているかと思うと、精巧な器械を工夫している。翼なしに飛ぶ手段を工夫している。あらゆる病を直す薬方を工夫している。死に打ち克つ法を工夫している。ひどく物質的な事が多いのですね。そんな事で人間が幸福になられるでしょうか。僕にはなんだか、ひどく矛盾しているように思われてなりません。十九世紀は自然科学の時代で、物質的の開化を齎した。