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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
余り出し抜けなので、驚いて目をっている婆あさんに送られて、純一は車に乗って新橋へ急がせた。年の暮で、夜も賑やかな銀座を通る時、ふと風炉敷包みの不体裁なのに気が附いて鞆屋に寄って小さい革包を買って、包をそのまま革包に押し込んだ。
新橋で発車時間を調べて見ると、もう七時五十分発の列車が出た跡で、次は九時発の急行である。国府津に着くのは十時五十三分の筈であるから、どうしても、適当な時刻に箱根まで漕ぎ着けるわけには行かない。儘よ。行き当りばったりだと、純一は思って、いよいよ九時発の列車に乗ることに極めた。そして革包と膝掛とを駅夫に預けて、切符を買うことも頼んで置いて、二階の壺屋の出店に上がって行った。まだ東洋軒には代っていなかったのである。
Buffet の前を通り抜けて、取り附きの室に這入って見れば、丁度夕食の時間が過ぎているので、一間は空虚である。壁に塗り込んだ、古風な煖炉に骸炭の火がきたない灰を被っていて、只電燈だけが景気好く附いている。純一は帽とインバネスとを壁の鉤に掛けて、ビュッフェエと壁一重を隔てている所に腰を掛けた。そして二品ばかりの料理を誂えて、申しわけに持って来させたビイルを、舐めるようにちびちび飲んでいた。