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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
純一は書生社会の名誉を重んじて茶代を気張った。それからお絹に多く遣りたい為めに、外の女中にも並より多く祝儀を遣った。
宿泊料、茶代、祝儀それぞれの請取を持って来た女中が、車の支度が出来ていると知らせた。純一は革包に錠を卸して立ち上がった。そこへお上さんが挨拶に出た。敷居の外に手を衝いて物を言う、その態度がいかにも恭しい。
純一が立って出ると、女中が革包を持って跡から来た。廊下の広い所に、女中が集まって、何か※(「口+耳」、第3水準1-14-94)き合っていたのが、皆純一に暇乞をした。お絹は背後の方にしょんぼり立っていて、一人遅れて辞儀をした。
車に乗って外へ出て見ると、元日の空は晴れて、湯坂山には靄が掛かっている。きょうも格別寒くはない。
朝日橋に掛かる前に振り返って、坂井の奥さんの泊っている福住の座敷を見たら、障子が皆締まって、中はひっそりしていた。
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鴎外云。小説「青年」は一応これで終とする。書こうと企てた事の一小部分しかまだ書かず、物語の上の日数が六七十日になったに過ぎない。霜が降り始める頃の事を発端に書いてから、やっと雪もろくに降らない冬の時候まで漕ぎ附けたのである。