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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
まだ朝早いので、通る人が少い処へ、純一が通り掛かったのだから、道の両側から純一一人を的にして勧めるのである。外から見えるようにしてある人形を見ようと思っても、純一は足を留めて見ることが出来ない。そこで覚えず足を早めて通り抜けて、右手の広い町へ曲った。
時計を出して見れば、まだ八時三十分にしかならない。まだなかなか大石の目の醒める時刻にはならないので、好い加減な横町を、上野の山の方へ曲った。狭い町の両側は穢ない長屋で、塩煎餅を焼いている店や、小さい荒物屋がある。物置にしてある小屋の開戸が半分開いている為めに、身を横にして通らねばならない処さえある。勾配のない溝に、芥が落ちて水が淀んでいる。血色の悪い、瘠せこけた子供がうろうろしているのを見ると、いたずらをする元気もないように思われる。純一は国なんぞにはこんな哀な所はないと思った。
曲りくねって行くうちに、小川に掛けた板橋を渡って、田圃が半分町になり掛かって、掛流しの折のような新しい家の疎に立っている辺に出た。一軒の家の横側に、ペンキの大字で楽器製造所と書いてある。成程、こんな物のあるのも国と違う所だと、純一は驚いて見て通った。