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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
そして理想主義の看板のような、純一の黒く澄んだ瞳で、自分の顔の表情を見られるのが頗る不愉快であった。
この時十七八の、不断着で買物にでも行くというような、廂髪の一寸愛敬のある娘が、袖が障るように二人の傍を通って、純一の顔を、気に入った心持を隠さずに現したような見方で見て行った。瀬戸はその娘の肉附の好い体をじっと見て、慌てたように純一の顔に視線を移した。
「君はどこへ行くのだい」
「路花に逢おうと思って行った処が、十時でなけりゃあ起きないということだから、この辺をさっきからぶらぶらしている」
「大石路花か。なんでもひどく無愛想な奴だということだ。やっぱり君は小説家志願でいるのだね」
「どうなるか知れはしないよ」
「君は財産家だから、なんでも好きな事を遣るが好いさ。紹介でもあるのかい」
「うむ。君が東京へ出てから中学へ来た田中という先生があるのだ。校友会で心易くなって、僕の処へ遊びに来たのだ。その先生が大石の同窓だもんだから、紹介状を書いて貰った」
「そんなら好かろう。随分話のしにくい男だというから、ふいと行ったって駄目だろうと思ったのだ。もうそろそろ十時になるだろう。