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せいねん
青年
「昴」1910(明治43)年3月~1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,670 字 · 246 页
大村の顔には、憎らしくない微笑が浮んだ。「そこで自己を犠牲にして、恋愛を得ようと思ったというのですか」
「いいえ。そうではないのです。それは僕だって恋愛というものを期待していないことはないのです。しかし恋愛というものを人生の総てだとは思いませんから、恋愛を成就するのが、積極的新人の面目だとも思いません」純一は稍やわざとらしい笑をした。「つまり貧乏人の世帯調べのように、自己の徳目を数えて見て、貞操なんということを持ち出したのです」
「なる程。人間のする事は、殊に善と云われる側の事になると、同じ事をしても、利己の動機でするのもあろうし、利他の動機でするのもあろうし、両方の動機を有しているのもあるでしょう。そこで新人だって積極的なものを求めて、道徳を構成しようとか、宗教を構成しようとかいうことになれば、それはどうせ利己では行けないでしょうよ」
「それではどうしても又因襲のような或る物に縛せられるのですね。いつかもその事を言ったら、あなたは縄の当り処が違うと云ったでしょう。あれがどうも好く分らないのですが」
「大変な事を記憶していましたね。僕はまあ、こんな風に思っているのです。