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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

「オベンチャラ言ってらあ」

俺としては口の中で言うつもりだったのに、つい声になっていた。

「なんだと」

と中尉は気色ばんだ。

「困ったね」

これでは酒は飲ませられんと慷堂は言って、

「よし、支那の話をしよう。このあばれん坊は、今し方、話に出た張継君の若いころにひどく似ているのだ」

と中尉に、なだめるように言って、

「張継君は殺されたかもしれんな」

俺は俺が似ているというこの旧アナーキストの悲運を聞いて、思わず、

「どうしてですか、先生」

とみに俺もいんぎんになっていた。

「今、ちょうど、支那の話を北槻中尉としていたところなのだ。孫文が死んだのは民国十四年の三月だが、その年の暮に、張継君たちは国民党に向って、共産党や第三インタナショナルときっぱり絶縁すべしと決議をつきつけたのだ。張継君らの老国民党の眼からすると、国民党もこんなことをしてちゃ、今に共産党に食われるぞと、さきが見えてたんだな」

孫文はつとに共産党に対して抱合政策を取っていた。共産主義は三民主義の一部であるとして、共産主義の実行はそのまま三民主義に通ずるという考えだった。そこにそもそもの間違いがあったのだと慷堂は言って、