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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

ほかのシマでは女郎だが、それが吉原ではおいらんと呼ばれている。おいらんは吉原にしかいないのだ。と言っても、おいらんだって、女郎だって、それからガセビリだって、「毛祭」に別にかわりはない。

源氏名を若紫というおいらんが俺の馴染で、馴染の俺は本部屋に通された。これは俺に、オトナになるのだと言ったあの女ではなく、その女のいる家ではない。

「おや、綺麗な人形を買ったな」

大きなガラス箱に入った藤娘の人形が、小さな茶だんすの上に、でんと飾ってある。

「ええ」

と若紫は言葉を濁して俺にお茶を出した。

「ああいうのは案外高いんだろうな」

誰かが買ってくれたものにちがいない。いい客がついたなと俺が見ていると、

「はい、兄さん」

ノリのきいたユカタをひろげて、着替えをしろと女は言う。

「うん。まだ、いいや」

俺は女の目につかぬようにして、ピストルを隠すにはどうしたらいいかと考えた。このままでも、ズボンの股のところが、まるであれがすごく勃起したみたいにふくらんでいる。おかしいので、手をやっていた。

「どうしたの、兄さん」

俺とおない年ぐらいと思える女は、いつもとちがってガツガツしてない俺に、気味悪そうに言った。