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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

ひとりで――俺は死のうとしている。ひとりで事に当ろうとしている。

テロリストの本懐にはちがいないが、軍人の独善をひんしゅくした俺自身が、その軍人の思い上りと同じようなヒロイズムに酔っていた。

軍人といえば、俺のふところに、たんまり金があったのは、北槻中尉からそれを軍資金として受け取ったからである。その金は中尉もどこからか、せしめてきたものにちがいないので、中尉自身がそんな金を持っているわけはない。どこからせしめてきたのか、中尉は言わなかったし、俺も聞かなかった。俺たちと同じリャクでせしめてきたのか。いや、あの軍人どもにそんな気のきいた真似はできない。すると、どこかに、隠れた後援者がいるのだとも考えられる。

その後援者というのは、相当の金持ちでないと、俺のふところにあるような金を、ぽいと出したりはできないだろうから、おそらくはブルジョアにちがいない。ブルジョアは俺たちの敵だ。敵の金で俺は……それも、まあ、いいだろう。毒をもって毒を制すで、それはいいとしても、ブルジョアが金を出すというのは、それが何か自分の利益になるのでなかったら、そうと分ってなかったら金輪際、そんなことはしないだろう。