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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

丸万もこの話は砂馬から聞いていたのだ。

「俺は二代目白竜か」

これらがはたしてほんとに馬賊かどうかは不明で、馬賊だと称して満州の日本人からヒン(金)をせしめていたのかもしれないが、とにかく砂馬の話だと有名な存在なのだった。

「早く来ねえかな、十七日が」

と丸万は正月を待つ子供みたいに言った。夜の街に俺のひそかに思い描いた、空を焼く焔が、すでに丸万の眼のなかに燃えあがっていた。

決行の前夜、俺は民間側の参加者とともに四谷の安待合にとまった。宿屋は眼につくから待合が選ばれたのだ。

丸万と連絡を取るため俺はひとりでいたかったのだが、単独行動はできなかった。黒旗革命のための別の暴動を企てているのを勘づかれてはならないから、単独行動を取ることはひかえねばならなかった。

酒をくらって寝たが、なかなか寝つかれない。安待合の蒲団は女くさい臭いがした。それは俺に女郎屋を思い出させ、若紫を思い出させた。いや、ほんとを言うと、照子を思い出し、そして波子のことを思った俺は、照子や波子のことは考えまいとして若紫を頭に浮べていたのだ。いや、もっとほんとのことを言うと、俺は女がほしかったのだ。