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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

と俺は言った。仲居はその俺に、

(こちらは学生さんみたいな齢だけど、職工さんかしら?)

そんな眼をちらとそそいで、

「それは、旦那。……」

砂馬を景気のいい工場主とでも見た眼で、

「旦那から芸者衆にかけあってごらんなさい」

「ことわられても、もともとだな」

だが、こんな時間にお茶をひいているミズテンなら、話の持ってきようで乗ってくるだろうと砂馬が言うと、

「芸者衆だって、旦那の持ちかけようでは、きっと面白がって……」

「面白がるか」

「旦那の腕次第ですよ」

「そう言わないで、手助けしてくれ。それが仲居のつとめじゃないか」

はいはいと仲居は花王石鹸のマークみたいな顎をひいて、

「腕とお金次第……」

「よーし、はりこもう」

これでもう話はきまったようなものだ。あんまり簡単すぎてあっけないくらいだった。

俺は改めてイキな座敷を見回した。粋筋という言葉が自然と頭に浮ぶイキな作りである。ここに出入りする女が、女郎や淫売とはちがう、イキな芸者であることを語っているかのようだ。

「こうなると、面白い子じゃないとね」

仲居は口のなかで芸者の名を言って、数をかぞえるような手つきをして、