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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

看守が大きな鍵をガチャつかせて、重野をどこへいれようかと房をのぞき回っていたが、

「どこも満員だ。ここへ、はいれ」

と俺の房を鍵であけた。

拷問でよほど痛めつけられたらしいよろよろした足どりで、重野は鉄格子の扉をくぐって、

「お願いします」

先客に、留置場なれした挨拶をした。その重野に俺が声をかけようとしたとき、

「そこ、あけてやれ」

と「牢名主」が細長い部屋の真中あたりに指を向けて、そこにあぐらをかいている奴らに、すきまを作れと命じた。

俺より上座につけたのである。大きな面をしている俺への、それがせめての腹いせのようだった。

「おい」

と俺は俺に気づかぬ重野に、俺の存在を知らせながら、そのそばに割りこんで行った。そんな俺に「牢名主」は待ったをかけはしなかったが、

「これは、久し振り……」

と俺には意外な、なつかしそうな笑顔を見せた重野に、

「大分ヤキをいれられたようだな」

と甘い言葉をかけて、俺との会話に水をさして、

「お前さんはアカだな」

そう言うと、「牢名主」は俺のことを、

「お前さんのダチかい」

と重野に聞いた。

「こっちはクロだ」

と俺は言った。

「クロ……?」

「クロ(有罪)にはちげえねえ」