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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
「きいたような口を……」
俺は猛然と腹が立ってきた。ジョテン(頭を殴る)をくらわしてやりたかった。
「わたしの言うこと間違ってた?」
何か抗しがたい響きもあって、
「よく見抜きやがったな」
腹立ちはいよいよ募っていて、だから俺は、
「お前さんの言う通りだ。誰か、いねえかな」
殺せる相手は――と俺は言った。狭い店のなかは、酔った客の大声で充たされていて、俺たちの声は消されていた。
「誰でもいいの?」
相手は俺をみつめて言った。
「じゃ、殺してよ」
「お前さんを?」
「殺してもいい。殺してくれない?」
陶然とした言葉は、殺人とはちがう意味だったのかもしれないが、
「面白い。こりゃ、おもしれえ」
俺はこのオカマをほんとうに殺してやろうかと、とっさに思い立った。犬をぶっ殺した俺は、あんなのら犬ではなく、人間を今度は殺したいのだった。
「よし、殺してやる」
精神的なめまいがこのとき俺を襲ったのである。
「ちょいと、ちょいと」
これはアビルの声で、
「ちょいと気になって来て見たんだが」
いつの間にかアビルが俺のうしろに立っていた。
「明日の晩、ここで会おう」
と言って席を立った俺に、アビルがあきれた声で、