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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
猿ぐつわもきつくはめてある。
「あーら、すごい」
と叫んだオカマに、こいつはイカサマをやったので、ふんじばったのだと、これこそすごい顔で部屋のなかに突っ立った男が言った。つづいて他の男が、こんな奴は海ん中にたたきこんでやるといきまいた。客の俺をそっちのけで、
「たたきこむ前に、息の根をとめねえと、ひょっこり生き残ったら、あとがうるせえな」
オカマが振りかえって俺に、
「あたしをタタム(殺す)かわりに、あの男をやったら……」
にやにやしながら、俺をそそのかして、
「いいとこ、見せてちょうだい」
「なに言ってやがる。いやだよ」
縛られた男は芋虫みたいにもがいていた。
「ゴソゴソなにを言ってたんだ」
部屋の男がオカマを睨みつけて、
「ロクも、こうなったら手伝え」
「はい」
オカマは俺に眼配せみたいなことをした。俺はフンと横を向いて、
「ふんじばっといて殺すなんて……」
「なに? えらそうな口をきくじゃねえか」
俺の捨て科白を聞き咎めて男が、
「そいじゃ縄をとこうか。といたら、お前さんがやるか」
「やるとは言わねえ」
「それ見ろ。そんな度胸もねえくせに」
「うるせえな。俺はここへこのオカマを殺しに来たんだ」