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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
打ちあけ話をあんたにしたかったの――。
「打ちあけ話だと? 何が、そんなバカバカしい作り話……その手にゃ乗らねえよ」
と俺は言った。まんざら作り話でもなさそうだと俺は思ったから、わざとそう突っぱねたのだが、俺があのもがく男の首にロープを巻いて、虫けらのように締め殺したのは、否定しようのない事実だった。
ロープで首を締めた。手で締めたんじゃない。だのに手で締めたみたいな感じなのは、ロープからその感じが俺の手に伝わってきたのか。男の首の触感が、いま気味悪くよみがえる。俺にはしかし、その舟に乗り移るときに、ちらと眼に映った、貝殻がいっぱいくっついた杭が――やわらかい触感よりも、眼で見ただけの固いカサブタだらけの杭のほうが気味悪く思い出された。
「作り話? あたしの作り話……?」
オカマのロクはぽかんとしていたが、間を置いて、こんな妙なことを言った。
「駄目ねえ、あたしは。まずいな、あたしは。作り話が人にすぐばれてしまうのね」
その声には、彼の特徴だった暗さが微塵もなく、晴れやかにそう言うと、
「こんなことじゃあ、舞台が勤まらないのも当り前だけど、あたしだって、もとは宮戸座のちっとは鳴らした女形だったんですよ」