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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
最初に心に来たのは、あのマリア・スピリドーノワだった。尾垣大将をねらって俺が京城に行ったときも、このマリアのことを思い浮べたが、波子に初めて会ったのはその京城の宿屋であった。あのときは、ひるむ心をみずから鼓舞するために、二十一歳のこの勇敢なテロリストのことを思った。
農民一揆に対して残忍な弾圧を下した副知事を、マリアは単身、駅で待ち伏せて狙撃した。その副知事はコサックに命じて、一揆をおこした農民たちを鞭で殴り殺させたり、その妻や娘に凌辱を加えさせたり、暴虐のかぎりをつくした。それに対するテロリストの報復としてマリアは副知事を射殺したのだ。目的を遂行すると、自分もその場で自殺しようとしたが、果せなかった。マリアをとらえたコサックの士官が彼女の頭の毛をひっつかんで、石の歩廊にたたきつけた。そしてその両足をひきずって、マリアを警察署まで引っ張って行った。
警察署でマリアは二人の士官から恐ろしい拷問を加えられた。そのため彼女の顔は、裁判のとき、これは人がちがうと証人が言ったほどの変りかたをしていた。のちにこの二人の士官は、マリアもその一員だった「ボエヴァーヤ・オルガニザツィア」