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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

波子の腹がだんだんせり出してきた。冬になると、誰にもひと目でボテレンと分るふくれ方になった。

ハクスイ(雪)がバレて(降って)来た。雪が深くならないうちに俺は金原に会っておこうと思った。綾子が言っていたあの金原で、金の原とはこれもひどく景気のいい姓だが、百成とちがってこれは姓だけのことで、本人は貧しい百姓である。もとは札幌で百成清一郎と一緒にアナーキストとして暴れていたのだが(ということを俺が知ったのは、綾子の口から金原の名を聞いてから、大分あとのことだった)、その金原が今は根釧原野に開拓農民としてはいっている。金原はそうした自分のことを「ヴセレンツィ」(流刑者)と呼んでいた。

俺は東京の慷堂に、俺がここにいることを知らせたいと思った。ここへ来て一年近く経っている。慷堂にだけは知らせておきたかった。金原を通してシャシャを這わそう(手紙を出そう)と考えたのである。

金原に会って、そのことを頼もうと俺は出かけて行った。途中であいにく吹雪になった。右翼の慷堂との音信は、綾子が右翼だと言った百成に頼んでもいいわけだが、そいつはやっぱりちょっとまずい。そこであのアビルの清一郎と同志だったという金原を選んだのだ。