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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

何かまずいことになりそうだ。そんなふうに思って、俺はあわてた。

あたふたと――見ている俺は、歩いている俺を目がけて駈け出した。すると向うの俺も同時に駈け出して、こりゃいけねえと、こっちの俺はまごついたが、息せき切って追いかけた。一心不乱に追いかけるので、とうとう向うの俺に追いついて、やれやれと俺はひと息ついた。

俺と俺がひとつになった。と思ったとき、妙なことがおこった。

荒野のかなたを歩いていた俺と、それをこっちから見ていた俺とが、ここで一緒になったが、荒野は依然として俺の前にひろがっている。と言うより、ひとつになった俺から、新たな荒野がはじまっている。それはいいのだが、俺からはじまる、俺の前のその荒野が、なんとも妙なものだった。荒野のかなたを歩いていた俺を、こっちから俺が見ていたときのあの荒野を、ちょうどそのときの地平線を境界にして向う側にそのまま倒したような――もし紙にたとえて言えば、地平線を筋目にして向う側に折ったみたいな、そんな妙な荒野が俺の前に展開していた。荒野は俺からはじまっているにもかかわらず、図の(二)のように、遠近が逆なのだ。

「図(二)」