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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
北槻大尉をはじめ、慷堂の家で俺の知った、あの青年将校たちはことごとく銃殺されたのである。
(あ……)
俺はどんなおもいだったか、ここでそれを言う必要はあるまい。言うとすれば、悲しみや歎きを言うことはない。俺は心の中でひそかに、殺された北槻大尉らのために復讐を誓ったのである。
慷堂も捕えられ、まだ獄につながれていた。慷堂が獄から出てきたら……と俺はその日を待った。慷堂と相談して、北槻大尉を殺した奴らに復讐してやろう。
事件に直接、関係のない慷堂がまさか死刑になろうとは夢にも思わなかったのである。
年が改まって、あの尾垣大将に組閣の大命が降った。大将は前年の八月に朝鮮総督をやめて内地に帰っていた。
この組閣は流産に終った。尾垣内閣に現役の陸軍大臣を出すことを軍が拒んだからである。
大臣は現役の大将中将にかぎるという官制の変更が前の年に行われていた。変更というより復活である。もとはそうだったのだが、大正期に政党勢力が伸長したとき、予後備役でも大臣になれると官制が改められた。それが現役制にふたたびひきもどされたのだ。
軍の力がそれほど大きくなっていた。尾垣大将は軍縮の元凶であり、革新派の青年将校と一時気脈を通じていたと見られて、軍中央部から嫌われていた。