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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
「詩はしかしペン・ネームを使っている。野中薫」
まさかそんな名は知るまいと思って言ったら、
「あなたが、あの野中薫……」
と風巻が知っていたのには驚いた。
「君は――詩が好きなのか」
「あなたの詩が好きなんです」
風巻は両手ではさんでいた眼鏡を胸もとまであげて、それがまるで俺の詩であるかのように胸に抱きかかえて、
「野中薫の詩を僕は大好きだ。あの詩は、とてもすばらしい」
俺はいやな気がした。風巻の言葉はお世辞でなく、ほんきの賞讃なのだから、気を悪くすることはないのに、どういうわけか、胸クソが悪いおもいだった。事実、俺は急に吐き気を催した。昨夜のゲーゲーからは誘われず、自分の詩をほめられると、ゲーと吐きそうになって、
「あんなもの、しようがない。下らない詩だ」
「下らない?」
「愚劣だな」
「どうしてそんなことを言うんです」
風巻は気を悪くした声だった。
「どうしてって……これから人殺しの現場へ行こうというのに、病人のタワゴトみたいな、俺のあんな詩に感心してちゃ、いけないな」
ゲロを吐くみたいに俺は言った。ゲロのかわりに、こんな感じで俺は言った。風巻は鼻白んで黙っていたが、