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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
「支那のほうでは、たしかにそう言っている」
と風巻は同調のうなずきをして、
「挑発行為をかなりやったことはやったらしい」
矢萩のことを俺は頭に浮べたが、軽率にそれを口に出して言いはしなかった。
「シナさんはなんでも抗日の材料にするからな」
中国びいきの雑貨商もモダン・ボーイ風の男に対しては、虫が好かないらしく、こう言って、
「事変勃発のとき、旗艦の出雲を攻撃しようとして、支那の飛行機が爆弾を落したんだが、さっぱり当らないで、それどころか、共同租界のキャセイ・ホテル前に爆弾が落ちて、即死者百五十人。それを逆に抗日の材料に使ってる」
「戦争がなかったら、そんな犠牲者も出なかったわけだ」
と相手の男はうそぶいた。雑貨商にかわって、他の者が、
「陸戦隊本部にも百発ほど落したらしいが、ひとつも命中しなかった。なっちゃないな」
そこへ屑鉄屋がひょっこり顔を出して、
「大砲のタマ、鉄砲のタマを仰山、よーけ使ったもんやなあ」
ベッドにもぐりこんだまま、食堂にも姿も見せなかった屑鉄屋は、廃墟のような対岸の「戦蹟」に眼を丸めて、
「えらい、ムダ使いしたもんや」
もったいないと言うのだ。