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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

俺は根室へ脱出する前のトヒバラシ(人殺し)の話をして、

「そのカタキを取ろうと俺をねらっている奴が上海にいると、あのオカマのロクが言う。そいつは四・五・六のロクのことじゃないかと思うんだが」

「それはオカマのロクの作り話だな」

と百成は即座に断定した。

「じゃ、なんで俺に向って、オカマのロクはそんなナショ(うそ)を吐くんだ?」

「加柴さん。あんたは俺を矢萩の一味と思ってるな」

と俺の心を見抜いて、

「この上海では、いつ、誰にねらわれるか分らない。用心しないとあぶない土地だ。今夜あたりが、最もあぶないかな」

「どうして今夜?」

「上海に来たてが一番……」

「あぶない……?」

「あんたのことだから、あぶながらないだろうが」

「皮肉か」

「あんたみたいに度胸のいい人ほど……」

「ほんとにあぶないか」

「あんたはみんなから度胸がいい、胆がすわった人と見られているにちがいないが……」

「それは、あんたのほうだろう」

「まぜっかえさないで」

百成はアビルに戻った感じで、

「あぶながらないのが、あぶない。危険に対して恐怖を持たないのがあぶない。危険感、恐怖感を持たない、根っからのテロリストだから、あぶない」