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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

「こちらは、うちの人じゃなくて――加柴四郎氏」

「加柴さん……?」

名は忘れていない声だったが、まさか……とでも言いたそうなその表情が俺をまた、かーっとさせた。

「しばらく……照ちゃん」

気がつくと俺は――馬鹿な俺だ、思わずそう言っていた。

「四郎さん……しばらく」

照子はさらりと言ってのけた。

畜生! 胆がすわってやがると、毒気を抜かれたおもいの俺は、

「加柴さんをマダムは知ってるのか」

と風巻が言うのを耳にしたとき、

「往年のテロリスト仲間さ」

と毒づくように言っていた。

「ほんとかい」

驚く風巻に、照子はにっこりと笑って見せた。そして俺に、笑いを消した顔を向けたとき、青い光が照子の眼からきらりと放たれた。アイ・シャドーのせいかもしれないが、たしかに青い炎のような、ツンと俺の眼を刺す光を俺は見た。

「さ、俺はスタンドに行こう」

席を立った俺は、このとき初めて、矢萩が来てやしないかと眼を配った。うしろから照子が小声で言った。

「裏の、あたしの部屋へ行きましょう」

「いいのかい」

俺はそんなへらず口をたたく自分がいまいましかった。照子はボーイを呼んで、何か耳打ちをした。