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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
「矢萩さんはどうして俺が根室にいることを知ってたんだろうな」
照子の返答を期待してない問いだったが、
「清さんから聞いたんでしょう」
と照子は言った。
「清さん……?」
「百成清一郎さん」
「まさか」
と言って俺は照子が、まさか、この人が四郎さん……? といった眼で俺を見たのを、くやしく思い出した。
「照ちゃんは俺の顔を忘れてたな」
「いいえ」
照子はよどみなく言った。
「何か差し障りがあるといけないと思って、わざと知らん顔してたのよ」
「照ちゃんは清さんを知ってたのか。百成清一郎と矢萩大蔵とは、やっぱり……」
「やっぱりって、なーに」
「照ちゃんのお父うさんは矢萩大蔵に殺されたそうだな」
「うそよ。そんなこと、うそ」
「今日は不思議と、俺の聞いた話がみんなスケトン(うそ)だ」
照子のパトロンが矢萩だというのも、スケトンか。それは言わないで、西瓜子のしんを俺は指さきでつまみ出していた。照子は両手など使わないで、片手で上手にやってのける。
「照ちゃんが北海道にいることを矢萩大蔵はどうして知ったんだろう?」
「四郎さんの言うあたしのレコ――それが矢萩さんの子分だったんです」
すらすらと言って、照子は俺のグラスにブランディをついだ。