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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

「昨日のピストルか。いやだと言ったらどうする」

右手を上衣のポケットに突っこんで、ぴたりと俺に寄り添った四・五・六はにやにや笑いながら、右手をポケットごと動かして、そこに隠したピストルの銃口を俺の脇腹にコツンと当てた。ピストルを持ってなかったはずの四・五・六が今夜は持っている。その四・五・六が、

「ちょいとお預かりして、あとで返しますワ」

と気味の悪いていねいさで言った。俺は――俺もにやにや笑って、丸万から貰ったピストルを出して、黙って四・五・六に渡した。

「すみませんねえ」

と彼は言って、勝手を知った足どりで俺をバーの裏口へ導いた。狭い階段をあがると、外に車が待たせてあった。素敵な雪仏蘭だ。

俺はクロークに外套が預けてあったが、そのまま車に乗った。乗せられたと言ったほうがいい。百成の言葉に従った形だが、事実として、百成の言った通りにしたほうがよさそうだった。俺は背心の裏にもう一挺、大型のピストルを隠していたが、それをすぐさまここで持ち出すのは賢明ではないと思われた。

車は蘇州河のほうへ疾駆した。車のなかで俺は照子のことを考えていた。俺を呼び出しに来た男がいると言うので俺が照子の部屋を出たとき、照子はその部屋に残ったままで俺を送ってこなかった。