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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

この野郎! 俺はしかし表面はおだやかに、

「朝倉の二の舞いはごめんだから、さきに矢萩を片づけようというのか」

「そう、矢萩矢萩と言うなよ」

「俺にそんな面白いゴトマブ(仕事)をやらせることはねえだろう。自分でやったらいいじゃねえか」

「あたしはモサナシだから」

「ご謙遜……」

百成の口真似をして、

「内地で俺はあの矢萩のために、ひとりの男を――俺の全然知らない、俺とは縁もゆかりもない男だったが、ニシを向かせたことがある」

俺はこの四・五・六を、オカマのロクの言ってた男と思ったわけでもないし、と言って百成の否定を信じていたわけでもないが、

「あれは俺のせいじゃない。矢萩のせいだ」

「だったら、よけい好都合だ」

「おめえにとって?」

「あんたにとって……。矢萩のためにニシマル(前科者)にされたカタキをここで取るんだな」

「俺の戸籍はまだよごれちゃいねえ」

「へーそうかねえ。お尋ね者じゃねえのか。領事館警察では、あんたを探してたようだがね」

「なんだって……」

「ここでひと仕事してくれたら、あたしたちが身体を張ってあんたを守る。サツの手にむざむざあんたを渡すようなことはしねえ」