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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

ミイラみたいに固まったせいか。屍臭は放っていなかった。

ところが竹藪に近づくにつれて死体の腐ったいやな臭いが風に乗って、ぷーんとにおって来た。どこかにまた死体がころがっているなと、竹藪のなかに足を進めて、あっと言った。数えきれないほどの中国兵の死体が折り重なって倒れている。路上の死体と同じようなミイラの状態だが、強い屍臭が竹藪のなかにたちこめている。日本軍進攻に対して中国兵はこの竹藪を拠点にして防戦し、そして全滅したのだろう。

金原は死体を無造作にまたいで行った。俺とちがって、もうなれているのだ。

ウルシ塗りの箱が土嚢がわりに使われていて、その箱の上に中国兵がうつぶせになって死んでいるのも見られた。その箱にどうやら豚の毛が入れてあるらしい。死体のあぶらが箱につたわって、雨もりのようなシミを描いている。弾薬箱の散らばった竹の根もとにも、同じ箱があった。

目的の箱は中国兵の死体にいわば守られて、ちゃんと保存されていた。

「すげえなあ」

と俺は言った。金原は気を悪くしたみたいな仏頂面のまま黙っていた。

租界に戻って、金原と一緒に宿屋に寄ってみると、領事館警察から俺に出頭命令が来ていた。