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いやなかんじ

いやな感じ

高見 順

「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页

青空文庫

「あのね」

言いたいけど、言いにくいらしい様子で、

「いつかの人は、どうして?」

言おうとしたのとは明らかにちがうことを言っていると俺は感じた。見るからにテキヤふうの丸万のことを聞こうとしたのかなとも思いながら、

「連れてこようか」

俺がそう言うと、

「よしてよ。あんな、いやらしい」

富江はカンザシで頭の地を掻いて、

「ちょっと聞いただけさ」

俺たちは上へあがった。

「勝手知ったる他人のヤサ(家)……」

と俺はおどけながら、階段を昇った。

女の案内なしに二階へあがった俺に丸万は、

「なかなか顔じゃねえか」

とニヤニヤしながら、部屋のなかを見回した。俺は座蒲団を裏返して、それに腰をおろしながら、

「ここのクララという女を、俺は女房にしたいと思ってるんだ」

「バシタ(女房)に?」

「身うけしたいんだ」

「身代金はいくらだ」

そっぽを向きながら丸万は言った。

「――五百円」

と俺は答えた。

「オテ百パイとはまた、随分よく出したもんだ。いいタマなんだな」

「見りゃ分る」

俺はぶっきら棒に、

「相談に乗ってくんないか」

丸万は黙っていた。

「ねえ、頼むぜ」「そんな金、どうして作ろうというんだ」