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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
「文学界」1960(昭和35)年1月~1963(昭和38)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 292,113 字 · 587 页
まだ? と相手は温顔に苦笑を浮べて、
「君もまだ、アナーキズムを信奉してるのかい」
「もちろんです」
「アナーキズムはさっぱり振わんな」
そんなことはないと丸万は肩を怒らせて、
「この青年は、あたしの同志です」
と俺を紹介した。この紳士は帝大法学部教授の有名な帆住博士だった。
向うの託児所から、青っぱなをたらしたガリッポシ(子供)の騒いでいる声が聞えてきた。帆住博士はセツルメントの運動の真摯な信奉者として、忙しい時間をさいてはこのスラム街に来ていたのである。
俺は特別にここで治療をして貰えることになった。なったのはいいが――あのころの治療は全くもって、原始的と言うかなんと言うか、ここだけが特別に原始的だったと言うんじゃなくて、どこだってそうだったのだが……。
馬の注射器みたいな太い管に、紫色の液体をたっぷり入れて、それを俺のヨシコのさきから注入するのである。人の眼にさらすのは、いくら男だって恥しい、相手が医者でもやはり恥しい、そのヨシコの、コスイ(小便)を出す穴から逆に、液体を逆流的につぎこまれるのは、心理的だけでなく、生理的にもいやな感じだった。おまけにその液体は、俺がクララに初めて会ったとき、便所でお目にかかったあの洗滌液とそっくり同じなのも、いやはや、いまいましい限りだった。