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ゆだんたいてき
ゆだん大敵
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1945(昭和20)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,664 字 · 41 页
……道場を出て、自分の住居へ帰ったかれが、なにより先に封書の中を見たのは当然であろう。
――いかなる秘伝が記してあるか。
心を戦かせながらゆるし書を披いた。しかし奉書のまん中に、墨色あざやかに認めてあったのは、「ゆだん大敵」という五文字だけであった。
柳生流の秘奥が列記してあると思って、昂奮していた藤吉郎は唖然とした、裏をひっくり返してみた、封の中に残ってはいないかと捜した。しかしゆるし書はその一通、ゆだん大敵という五文字のほかには「秘伝」らしきものはなにもなかった。
藤吉郎に五十日ほど後れて田口求馬が免許をとり、続いて早川駿五郎、大槻甚右衛門の二人もゆるし書を取って道場を出た。
かれらに代って四人、次ぎ次ぎと入門して来たが、横堀賢七ひとりはそのまま居坐りであった。一刀流の腕も相当だし、稽古ぶりでもぬきんでてみえるのに、かれ一人だけ二期の門人の中へ残されてしまったのだ。
――こんなばかなはなしがあるか。
賢七は屈辱をさえ感じた。
そしてある日、城から早めに退出すると、ひじょうに息込んだようすで大槻の住居を訪ねた、甚右衛門は留守だった。そこで早川を訪ねると、