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イデオロギーがいろん

イデオロギー概論

戸坂 潤

第四章 文化社会学の批判「文化社会学」同文館、1932(昭和7)年4月5日<br>第五章 知識社会学の批判「思想 第101~103号」1930(昭和5)年7月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,000 字 · 316 页

青空文庫

――之が不決定性の原理である。

こうした不精密さは併し、因果律の適用をおのずからそれだけ不精密にする。自由電子の位置が充分に精密に測定され得てもその運動状態がそれだけ不精密にしか測定され得ないから、次の瞬間この電子の状態は精密には決定出来ない。処が一切の個々の事物が一切の個々の瞬間に就いて、完全に精密に決定されているということが、因果律の要請ではなかったか。ここにはだから偶然性が支配する、電子の位置の如きは、一つの可能性・蓋然性にすぎない。電子の存在は、電子の存在の蓋然性に外ならない、とも云われている。

この測定に於ける不精密さは併し、決して測定という主観的な研究方法によって初めて引き起こされたものではない。量子論で云うように物理学的対象――存在――そのものが量子的であったが故に測定作用も亦量子的であらざるを得なかった迄である。問題は一対の物理学的量の客観的な交互作用の内に横たわる。だから不決定性の原理は人々が往々想像するだろうような認識主観の限界を意味するのではない。でここに出て来る偶然性は、認識主観から由来するのではなくて客観的な存在そのものにぞくしているのである、今この点を忘れてはならない。