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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

ほら、あのA爺さんさ。」

「そうか。あの人はたしか城山に家があるといっていたね。」

「うむ、あれで、汽船も持っていれば自動車も持っている。山も持っているという話だ。何でも富豪だと聞いている。」

「えらい元気だね。喧嘩だったらひとつ出てやろうと思ったがね。」

「ぬうっとかね。」

「あっはっは。」

「お得意の剣道も当にはならないよ。尾山の篤二郎と相上段というところでね。」

「やあ、これは参った。いつかの歌の会のテエブルスピーチかい。失敬失敬。」

「だが、今日はずいぶんみんなが亢奮してるじゃないか。」

「草根木皮の祟りだろうよ。」

「あははは。まあ紅茶を一杯いただこう。」

私たちは、早速に船室の浴槽で、身体を温めて、さばさばした浴衣の着流しで、卓に対い合った。それから間もないことであった。

「今夜は飲めそうかね。」

「いや、どうも咽喉がこれじゃあね。」

「困ったね。大切にしたまえ。僕は三等へでも行って遊んで来よう。気楽でいい。」

「三等も今夜は亢奮してるぜ。」

「何にしろ、あの吹き降りに国境を見て来たんだからね。少々は変になるだろう。」

「だが、A博士はなかなか国粋党だね。」

「あれでね。