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フレップ・トリップ
フレップ・トリップ
北原 白秋
「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页
樺太神社
しっとりとした雨後であった。坦々とした幅広い道路を、いかにも自動車のタイヤが軽く親しく滑って行った。大鳥居の前で下りると、清楚な白い石畳の道を、また石の段を真っ直に、私たちは登って行った。その両側の土の色も芝生も落葉松の林も石燈籠も、見るものがことごとく雨をふくんで、また何ともいえぬ緑と白との涼しさをしたたらしていた。ことに後ろのなだらかな丘陵の緑は明るかった。私はつくづくと思ったが、この八月の樺太の爽かさは、とても内地に見られない色と香気との新鮮味を持っている。これは驚くべきものだ。展望がまたひろびろとして、しかも清らかで新らしくて、まことに植民地の神苑だと感じられた。祭神は大国魂命、大己貴命、少彦名命の三柱だ。神殿の前に立つと、私たちは皆濡れしずくの麦稈帽を脱った。
神殿はもう薄紫の暮色がたちこめて、奥殿に何か幽かに光るものが神々しく拝まれた。ほの青い装束のけはいもした。
「上って見ましょう。」と一人がいった。
私たちの靴の紐は湿って解きにくかった。やっと解いてから、木の階段を上った。
烏帽子姿の神官が、神前の供え物を、その白木の三宝を一つ一つに片づけていた。