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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

小沼農場

や、や。

「あ、君、象の子がいる、象の子がいる。」

小沼農場

赭いガサガサした粗皮の椴松、蝦夷松、たもの木などの丸太で組立てた樺太庁農事試験場の歓迎門は流石に簡素であった。まことにいい趣味だと思わせた。

私たちの一行は小沼駅へ着くと、すぐに線路を越えて、その入口にかかった。よく掃かれて塵一つとどめぬ白い農園道は、坦々として真っ直ぐに熟色のライ麦や燕麦の畑中を通っていた。行啓の名残で、黄や赤や紫や青やの万国旗が此処でもまだ翩翻としているその下を、薄い翅のかがやく蜻蛉や蝶々の番いが、地にすれすれに流れたり縺れ飛んだりしていた。空は蒸しても何かしら光らぬ北方の曇天であった。

豊原から此処までの二駅の間は、たも、ばっこ楊、落葉松の疎林に紅紫の楊蘭や薄黄の山独活、ななつば、蝦夷蘭の花がまだ野生のままに咲き乱れて、ただ処々に伐採跡の木の根っ株が顕れていた。だがこの小沼へ来ると、総てはうち開けて整然とした穀物と野菜の祭りが私たちの前にあった。

案内役は林野局の局長のAさんである。

前夜、私たちはあらかじめ定められた北一条のH屋旅館にひとまず落ちついて、大泊から廻って来る同勢を待ち受けることにした。