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フレップ・トリップ
フレップ・トリップ
北原 白秋
「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页
イワンの家
」
「や、それは失敬、だがもう僕は酔っぱらったよ。」
「お砂糖にかい。」
「雨にだ、ほら。」
外は濛々とした霧けぶり、銀と緑の驟雨、驟雨、驟雨、
あ、模糊として、なおかつ白い白樺の遠景。
「さあ、諸君踊ろう、踊ろう。静粛に。」
音は走る。
夏は走る、走る、走る。
イワンの家
雨はまだ激しかった。
緑である。白茶である。黒である。濃鼠である。そうした自分たちの、または農場から借物のレインコート、雨合羽、軍人マントの一行五人が、案内の技手君を先きに立てて、全くの濡れしずくになって飛び込んだが、其処がイワン・クリロフの家の入口であった。
「おいでかね。」
内では何やら答える声がした。
ずかずかと技手君ははいって行った。私もみんなの後から、蝙蝠傘の雫をきりきり、そのままで蹤いて上った。もっとも雑草の離々たる原っぱを横切って来たので、私たちの泥まみれの靴は綺麗に拭かれていた。
頭の禿げ上った乳っぽい赤ら面の、眼の柔和な、農民風の五十男の露助が、何か羞恥んだような驚きと親しさを見せながら、立ちあがると私たちへ笑いかけた。ペチカの前にでも跼んでいたのらしい。濃い藍色の労働服を着ていた。