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フレップ・トリップ
フレップ・トリップ
北原 白秋
「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页
その把手を菜っ葉服の一人が両手でしっかと引き降しに圧えた刹那である。
椴松の伐りっぱなしの丸太の棒が、一本ずつ、続々に、後から後から、鱶のごとく、鯨のごとく、鮫のごとく、生き、動き、揺れ、時には相触れ、横転しつつ、二条のレールの間を、エスカレエタ式の流れに乗って、遠い屋外の白光から、一旦黄色光に変じ、黄色光から、宏壮な機関室に入って、やや本然の木地の明りにその色は沈静して、しかして、コトリコトリと首をもたげて来る。その一列の丸太を載せて、流れは極めて単調である。疾きがごとく、遅きがごとく、流るべくして流れ、移るべくしてただ移る。いわゆる淡々たり寂々たり、虚にして無為だ。
時にまた、レールの上、十二、三吋の空間をあけて、かの直径七十吋余の截断刃が、むなしくその霊妙音を放って、ただに劉喨粛々と空廻りしているのである。その旋転光。
と、第一の丸太が流れてその関門にかかって来る。恐ろしい刃の下に。
丸太はすでにその荒皮を剥がれているのだ。何時のまに如何なる機械によって、かくもすべすべとなまなまと、木地も露わにめくられ引きむしられたかそれはわからぬ。その生肌が目を瞑って来る、仰向いて、観念して。