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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

タゴールそっくりといっていい。いや、それよりも厳ついかも知れぬ。それが白い麻の支那服を著て、一等の談話室の、ラジオの黒い喇叭が二つ背中合せに立っている緑の大卓を前に控えて、ポケットから大きな眼鏡を取り出すと、白髪頭をひと振り振って両耳へ掛ける。何か書類をいっぱいに拡げて、それは精密に書いたり調べたりしている格好を見ていると、まるで白い牡牛のような活気と精力とが充ち満ちていそうであった。

「おい。」と、昨日の朝だったか、庄亮が私の袖を引いた。

「あのお爺さんどうだい。みんながね、白秋さんはどの人だろうと探している様子だから、ひとつ、あのお爺さんがそうだといってやろうかね。おもしろい。」

「莫迦いえ。あんな白髪のお爺さんにされちゃあ困る。」

「いや、いいよ。あれだあれだ。」と頭をかかえて笑い出した。

その話がまた出ると、

「まあいいさ。ゆうべですっかりお里がわかっちまったんだから。」

「あのお爺さんも余程おもしろかったと見えて、おしまいまで、一緒に飲んだり跳ねたりしていたぜ、君。」

「知っとる、知っとる。ほんに酒好きけんな。飲ます事ちなか。とてん偉えお爺さんの如る。