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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

」

「弱る。俺はもうむぐっちょで、高麗丸へ帰りたくなった。」

「印旛沼なら、この頃は鯉のあらいに鯰の丸焼きというところだね。白焼の鰻もおつなものだぜ。」

「俺のところだって、この頃は鮎のフライがある。それに鰆は今しゅんだな。コールドビーフが食べたいな。おい。」

「茄子、南瓜、隠元、大蒜、うちの畑はいいよ、そりゃ。」

「だが、あの大蒜には閉口した。」

「あっはっはっ。あの時の君の顰め面ってなかったぜ。うちでは話の種になっている。」

「ほう。そうかい。」

「ところで、ここの料理だがね。鑵詰物なぞにしなくても、なんでこの土地の新鮮な魚や野菜を附けないのかな。」

「内地の物だと何でもいいことにしてるんじゃないかね。これでも優遇のつもりかも知れん。」

「優遇じゃありませんよ。」と向うから声がする。

「姐さん。や、酒が来た。まあひとつ遣ろう。どうだい。」

「うむ、ありがてえ。」

と、そこで口を盃へ、顔を見合せると、二人とも、や、や、や、

「駄目だな、どうも。」

「こりゃいけねえ。」

と、その時、旅客課のK君が「やあ。」と這入って来た。何かおどおどして、気弱そうな微笑を眼の縁に湛えて力がない。