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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

淫猥とも俗悪とも、それがその悪達者なだけにとても見るに堪えない代物なのである。

社日ざくらに十神やま

やんややんやと、観衆が笑いこけこけ喝采する。手をたたく。それをいいことにして、

「ええ、今度は詩吟入り、おなじく安来節。」と日の丸の軍扇が胸を叩く。

「よし来た。コラサッと。」

黒んぼの奴、すっかりお調子に乗って、いよいよ出でていよいよ妙ちきりんな姿態をする。跳ねる、飛ぶ、眼で媚び、股でひねる。日の丸も負けず劣らずである。味をやる、きいきい声を出す。

ああ、日は小さくもないのにな。夜になれば夜で、月も星も光るのにな。

考えると、踊にも高下がある。それは踊る人の気品によるのだ。すぐれた気品は表現以上の心法の鍛錬から来る。つまりは内から映発するのだ。奥の奥の人柄の香気だ。芸は道なり。深く心を潜めてこそ行為にも光る。詩を生むのも踊に現わすのもその精神とするものは凡ては一つで、二つではあるまい。この流通こそはおのずからに現われて来るものだ。だからたとえば、私も踊る。ではあるが、私の踊は父とも母とも妻とも子とも弟ともおどれる踊だ。三重吉の鰌すくいも、あのままがあの人の芸術と同じ高さの心で現れる。