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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

「ありがてえ、ありがてえ。」と庄亮が例の両手を振り振り、その頭をひっ擁えると、ふくれた※(「目+匡」、第3水準1-88-81)を紅くして、目で喜んで、また頭を打ち振った。

「や、殿下もこれを召しあがったんだな。」と、私も恐縮した。

「ええ、奉呈しました。それにお扈従の武官たちにも出したのでした。そのおさがりです。」

「いい時に来あわせましたな。ひとつ戴きますかな。」とAさんはピシリと箸を割った。

「乾杯、乾杯、さあ。」と立ってミルクのカップを私が差し上げると、

「天皇陛下万歳ぁい。」とAさんが太声にどなった。

「皇后陛下万歳ぁい。」

「万歳ぁい。」

「摂政宮殿下万歳ぁい。」

「皇太子殿下万歳ぁい。」

「万歳ぁい。」

そこで、また、

「羊の蒸肉万歳ぁい。」と私が叫んだ。

「さあ、このミルクだ、搾り、搾りたてのミルク万歳ぁい。」

「搾りたての、あっはっはっ。」と庄亮が哄笑すると、「や、万歳、万歳。」と軽く早口に、鼠の縞縮の、尻端折の、メリヤスのズボン下の、黒兵児帯の、腰手拭の、それがあっはっはっで掛けてしまった。そして、

「これはすばらしい。このサラダも万歳だ。」

「ほんとだ、これはフレッシュだ。