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フレップ・トリップ
フレップ・トリップ
北原 白秋
「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页
奥殿へ通ずる扉を、それから閑かに閉して、薄ものの緑の、昆虫の翅のような装束をまた幽かに光らして下って来る神官に、また一人が呼びかけた。
「あの扉は何と申しますか。」
「中門です。」
まだうら若い、眼鏡をかけた人であった。
その人は黒い烏帽子を前かがみに、私たちの前に、やや斜めに跪いて、審かしげに、また親しそうに此方を見た。
「大国魂命と大国主命とはちがいますか。」とまた一人が訊ねた。
「はあ。」
「としても、やはり出雲系の神様でしょうな。植民地の祭神はよくそうのようで。」
「そうだよ、君、植民政策としては最も当を得ているかも知れん。」とまた一人がいった。
「だが、出雲系と天孫民族とはどうしても僕も同種属ではないと思う。素盞男命からして併合政策として、日本神話の大立物に祭り上げてしまったものらしいな。」
「そういう見方もありますね。」
「だから、どうしても天照大御神を中心に、お祭りするのがほんとうでないかと思う。植民地にしても、日本である限りはだよ。」
「台湾は。」
「北白川の宮様を合祀してあります。」
「なるほど。」
ひっそりとした四辺であった。蕭やかな、光の外の光と、影の中の影とが相縺れて、それらが物の隅々にまで柔かにうち燻んでゆきつつあった。