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フレップ・トリップ
フレップ・トリップ
北原 白秋
「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页
日本人同志にああしたいい匂いの残る面会というのはなかなかないようだね。」
「樺太長官はどうです。」とF君が声をかけた。
「ああ、あの訪問ですか。」
「はっは、あれには驚きましたね。不得要領きわまるんだ、実際。」
「風采はあがらないが、あれでなかなか如才ない方でしょう。でも官僚は僕の性に合いませんね。」
大きな大きなガランとした階上の一室にその痩せ形の長官某氏が納まっていた。大きなテーブルには書類が少々散らばっていた。牧畜家のH、麦酒会社のF、印旛沼開墾の庄亮、京都府警部のA、それに私がその前の椅子に腰を下ろしていた。昨日の正午前のことであった。
植民について、――土地選定、土地区劃、土地処分。農業移民の生活状態について。畜産について、また林業について――造林、保護、調査。水産、或は教育について。交々詰めかけ詰めかけ質問した私たちに、かの樺太の王様たる長官が何を、また如何なる熱誠を以て応答したろう。
「ええ、実はそのお。」「ええ、実はそのお。」で、やや罅の入った重い濁り声で、咄弁でもなく雄弁でもなく、ただ冗漫言をだらだらと素麺式に扱いてゆくだけであるので驚いた。