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フレップ・トリップ
フレップ・トリップ
北原 白秋
「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页
その鞄は紐が短いので、掛けると左の小腋に吊り上がった。幼稚園の生徒のようだった。みんなが笑った。
内地の小さな村役場くらいの物産陳列館にもはいって見たが、豊原のを見た目には別に取立てて変った種類もなかったので、おそろしく深々とした熊の毛皮の外套や、防寒帽子、雪沓などを取り騒いで買い込んでいる人たちを後にひとりでまた外に出てしまった。
部落はたいした町家並にもなっていなかった。どの家も平家で、半ばはお粗末なバラック風であった。露領時代の名残も見えた。草もぼうぼう繁っていた。いちばん広い通りかと思われる砂地の十字路に出たところで、私は上の方から麦酒の空瓶らしいのを両手にかかえて小走りに駈けて来る八つか九つぐらいの卵色の軽い服を着けた亜麻色の髪の女の子に遭遇った。と、その女の子が私のオロチョンの鞄を見るとたちまち立ち停って笑い出した、身体じゅうで。露草色のくるくるとした瞳であった。何か見たような顔だと思った。
「いいだろう、これ。」ぽんぽんと、こちらも叩いて見せた。それからふっと気がついて私は訊ねて見た。
「あ、君だったね、絵葉書に写っているのは。」
「やだア。