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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

従って良民は南下して日本領内に亡命した。で、農作は絶え、畜産は滅び、食糧には窮乏して来た。従って、結氷期にでもなると、幌内川を挙って南下しかねないという。橇を駆ってだ。それで敷香では無論防禦の武器はいくらかは準備してある。だが、かの世界の兇暴を兇暴とする強盗群の襲来を果して撃退し得るかは疑問である。それのみでなく、彼女たちは日本内地の大都会の文明的色彩と繁華とをまるで夢の様に憧憬しているらしかった。神戸へ行きさえすれば、日常の生活などはどうにでも幸福に過ごし得る事と、単にただ無邪気に考えているらしかった。

「お金あるよ、千五百円。」

ママは開けすけだ。

「牛売ります。ね。」

何と、ロスキーの大まかで、善良で、無邪気で、一本気で、また開放的でやりっぱなしであろう。こうしたのがいわゆる露西亜気質というものかと私は感嘆した。全く何と好きな国民だろうと。彼女の中にもイワンの莫迦は光っていた。

それ位で知人もない神戸へ行くのは危険だ、それは止したがいいと、私はしきりに手を振ったが、七面鳥さんなかなか強情っ張りで、容易に私の戒告を聴こうとはしなかった。

「神戸行きます。