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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

「やあはっはっ、」と庄亮が頭をかかえて、顔を赤くしながら笑い笑い出て来た。「どうしたんだ。」と訊くと、

「そのなんだよ。」と生真面目になって、「種馬の交尾をないしょで見せたいといってるがね。君、どうする。」

「ほう、何処で見せるんだ、それは。」

「道庁の牧場だといっていたぜ。すばらしいんだそうだ。」

「そりゃそうだろう。だが、今晩の歓迎会はどうだ。」

「それもだが、君が校正を済まさないと、僕は鉄雄さんに申訳がないがね、昼間中は勉強してくれたまえよ、上ったらすぐ旅館に鎮座さして、誰一人寄せつけないことにするからね。」

「籠城かい。だが君、今日一日引籠ったところで、とてもできそうにないよ。だから。」

「だが、僕は困る、ちゃんと仕事させますと約束して来たんだからな。」

「驚いたな。君の監督も怪しいもんだぜ。」

「あっはっはっ、僕だけは一杯やりに行く。君の邪魔になる。」

「置いてきぼりかい、いやだなア。」

で、種馬見物は帰りにでもということにしてもらって、ぞろぞろと出迎いの歌人たちに交って階梯を下りかける、すぐにランチに飛び移ると、

「兄さん、おい、兄さん。」と、別の大型のランチから、逞しい面の浅葱の背広が呼び立てた。