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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

小樽を出る時、私は小田原の妻子へ、こう打電したものだ。つい三、四時間前のことであった。私たちは一旦着換を済ますと、しばらくは右舷へ集って、応接に遑もない鮮緑色の海岸線を物珍らしく楽しんでいたが、一人減り二人減りすると、私もまた左舷の自分たちの甲板へ還って来た。其処には先きにいったように遥々とした大洋があった。あの光のない、ただ明るいだけの波濤の連続が。

その波濤の面の金と紅とが乳黄となり、やや寒い瓏銀となり、ブリュブラックとなり、重く暗くなり、そうして今は舷下の飛沫と潮とがただ白く青く駛って、擾れて、機関部の汚水がタッタッと吐き出されてゆく。

一寸したウイスキイの酔は、すぐにも発散したし、湯上りのやや肌寒を感ずるところへ、明日はいよいよ樺太だと思うと、何か気も昂れば、引き緊っても来る。

「おい、何を考えてる。」

こうした時、ぽんと肩でも叩かれたら、私は恐らく顔を赤めたであろう。

「郷愁だな。」

そうしたものだろうなと私は私自身にも答えても見た。

私ばかりでなく、これは籐椅子、木の椅子、安楽椅子のこれらの一列の人々の凡ての顔にも表われている。

おおいおおいと誰やらが