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フレップ・トリップ
フレップ・トリップ
北原 白秋
「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页
こう見渡したところ、その他の船客たちも何れも相当な紳士ばかりで、至極至極におとなしい。
それが申し合せたように、今夜は不思議に静粛である。庄亮までが、風邪気味で咽喉を痛めたというので、さして左が利かない。
「止すか。」
「うむ。御飯にしょう。」
何とまたH夫人の鼠色の眼鏡が寂しいことだ。
*
、こちらは東京、ゴウゴウゴウ、放送、ガバガバガバ、局であ、グワウグワウ、す、す、す、す、ジャオジャオジャオ。
「何だ、いったい、こりゃあ、しょうがないな。」
と、誰やらが、心細い声を出した。まだ宵のくちの一等談話室のソファである。
「今頃は半七さ、グワウグワウグワウ。ジャオオ。」
「ああ、ああ。」とまた一人が立ち上った。
「ラジオにもいよいよ見放されるのかな。」
と、また一人が、しみじみと、眼鏡をはずして、浴衣の袂で拭き初めた。
と、また新来の若い中脊の背広の紳士が、その台の方へ行ってしきりに二つのレシーバーを耳に嵌めては、針を動かして見たり、跼んだり、透かしたりして見ていたが、それも諦めたように、耳のをはずして、カチャリと置くとこちらを向いた。美髪のどちらかといえば円顔の眉の凛々しくつまって、聡明な眼の、如何にも切れそうな態度でいい。