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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

髪を立てて撫で上げている。

「持っておいで、短冊でも、明日でいいだろう。」

「は。小樽で買ってあります。」と、ありがとうとはいえないで、頭を垂れた。

「そこでと、吉植さんは、おいでならんとかな。吉植さん。」

「吉植君は風邪で弱ってますよ。」

と、「やああ。」と寝室の方から、我が庄亮が浴衣の胸をはだけて、ぬっと坊さん頭を突き出した。ちょっと此方を見て眉を顰めたが、何思ったか、ついと出て来て、私の傍に腰を下ろした。

「どうもそのね、北原君は已むを得ない仕事があって忙しいんで、困ってる。麦酒は明日にしてもらえんかね。」

「これは御挨拶、痛み入る。しかしじゃ、先生はよろしい、飲もうというてござるじゃて、ようござりましょうがな。お邪魔ならおいとま申す。それは失礼。だがな、どもならんそうじゃて、どもならん。」

「浪の音だそうだよ。」と私はまた笑った。

「ええ、浪の音。そうじゃ、あっはっは。いやにその。」

「まあいい。君は寝ていたまえ。障るとわるい。」

私はこれはやはりどもならんと思ったので、麦酒のコップを執りあげた。

「困るなア、それではね。僕がお附き合いしよう。よし、かまわぬ。